木鐸社

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『憲法改正の政治学-国会の言説と政策過程-』

 本書は、戦後日本政治の最大のテーマの一つである憲法改正について、なぜ今まで実現しなかったのかを探ったものである。理由としてこれまで、左右のイデオロギー対立の激しさや改正手続きのハードルの高さに加え、条文が少なく解釈(変更)で済まされてきたこと、改憲に向けた世論の弱さなど、様々な説明がなされてきた。それぞれ重要な示唆を与えるものではあるが、民主的プロセスを経た政権党が長年憲法改正を唱導してきたにもかかわらず、一向に実現しなかった背景事情を完全に解き明かしたとは言い難い。
 憲法改正発議の舞台は国会であり、国会で憲法について専門的に議論を行う機関として衆参両院に憲法調査会が設けられたのは2000年である。以来、調査会は調査特別委員会、審査会と姿を変えながらさまざまな検討を行ってきた。調査会以来の議論を集積し分析した学術的な研究は、管見の限りこれまでなかった。憲法改正も一つの政策過程であり、その成否の原因を探るには、調査会以来の国会の議論を分析する必要があるのではないか。政治を動かすのは「言葉」である。憲法改正を目指してどのような言説が使われ、それがどのような帰結を生んできたかを分析することは、「憲法の未改正」という現在地に我々が立っている理由を探る、最も直接的で確実な方法であろう。
 筆者は、報道の立場から調査会以来の審議を長年取材し、時々のアクターたちから証言を得てきた。分析対象は、衆参の憲法調査会が発足した2000年から、オンラインによる国会出席を衆議院憲法審査会が認めた2022年までを基本としている。全体を通して言えることは、憲法改正という政策過程に対するアクターたちの理解の不十分さおよび一貫した戦略の欠如が、課題解決を長引かせたということである。万人が賛同する「解」が見いだせたとは思わないが、今後の憲法論議に向けて考えるべきいくつかの手がかりが得られたと考えるものである。


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