木鐸社

Tel:03-3814-4195112-0022 東京都文京区小石川5-11-15-302

『政治学研究の基礎―政治を科学するために』

訳者あとがき

原書The Fundamentals of Political Science Reserch, Third edition( 2018, Cambridge University Press)はテキサスA&M大学政治学部の教授2人が、学部学生の初年次教育のために執筆したものである。アメリカでも数学を嫌って政治学を専攻する学生が多い。しかし、統計手法の発展とともに、政治学では統計手法をベースとして科学に寄せる手法が主流となった。統計手法を用いずに科学に寄せることは、学部学生のみならず多くの平均的な研究者にも極めて難しい。その意味で、統計手法は私たちの味方であると考えてほしい。本書は、数学嫌いの学生にも理解して欲しいという目的をもって、政治をいかに科学的に理解するかを示している。本書は政治学研究の基本中の基本のみを範囲としているが、本書で述べている因果関係の4つのハードルは日常生活を送る上でも重要な思考訓練である。 本書の後半(第7章以降)で扱っている統計分析は、頻度統計という古典的な統計手法を基本としている。頻度統計はサンプルから母集団を推定するにあたって帰無仮説の棄却というややこしいロジックがある。これに対し、仮説が正しい確率をデータを用いて更新していくベイズ推定、予測に特化したモデル選択や機械学習、そしてデータを用いて因果関係を推定する統計的因果推論が発達してきた。いずれの手法においても、第6章に述べた通り、データをよく読むことが基本である。因果推論に関しては、松林哲也『政治学と因果推論 比較から見える政治と社会』を勧めたい。なお、松林氏もテキサスA&M大学で原書の著者たちに指導を受けた一人である。 私が2010年前後にアメリカで大学院生として政治学方法論を教えていた頃、本書は学部学生に政治学を教える教員たちの間で評判が高かった。私も原書をもとに、テキサスA&M大学、北海学園大学、津田塾大学の1年生に教えてきた。翻訳にあたって、改めて原書の良さを感じている。 本書の内容を踏まえた私の講義を数年にわたって何度も聴いており、今現在も足元にいる聴導犬の次郎さんに本書を捧げたい。

<< 前のページに戻る

サイト内検索

↑ PAGE TOP