『社会的合意と時間:「アローの定理」の哲学的含意』
A5判300頁定価:本体4000円+税 ISBN978-4-8332-2493-2 C3031 2017年3月1日刊行
著者紹介
斉藤 尚(さいとう なお)
現在 東北学院大学経済学部共生社会経済学科 准教授
早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程修了 )
博士(政治学)
主要論文
「推論的ジレンマと司法審査の正当性」『年報政治学』(2014)
「道徳的ルールとしてのアローの社会的選好順序」『経済学史研究』(2015)他
内容紹介
本書は,アローの定理およびアローによる全員一致の仮定の不可能性定理を検証し,それらがデモクラシー論に与える含意を明確にするとともに,その否定的結論からリベラル・デモクラシーの存続基盤を擁護すること,すなわちアローの定理から擁護可能な社会契約を提示することを目的とする。
直接的には「社会の存続を基礎づける道徳的ルールの不可能性を証明したとも解釈できるアローの定理の否定的な結論は,そのような解釈の下で克服可能か」である。より間接的な問いは,リベラル・デモクラシー国家の存続基盤は何か,もしそれが理想主義的な社会契約論者が考えるように社会契約であるなら,その際に合意される道徳的ルールは何か,言い換えれば,善についての多様な価値観をもつ諸個人が同意する一般的な善とは何かである。
目次 | |
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序章 | |
第一部 アロー『社会的選択と個人的評価』(SCIV)の解釈 | |
第一章 道徳的ルールとしてのアローの社会的選好順序 第一節 1951年以前の厚生経済学における科学と倫理 第二節 SCIVにおける社会的決定プロセスと社会的厚生 第三節 バーグソンおよびリトルとアローの論争 第四節 SCIVの方法論的基礎 第五節 表明された選好と道徳的選好の違い 第六節 SCIV以降 結論 第二章 SCIVにおけるデモクラシーと社会契約 第一節 SCIVの政治哲学的基礎 第二節 社会的選択理論と社会契約論の比較分析 結論 第一部 結論 |
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第二部 アローの定理とリベラル・デモクラシー | |
第三章 アローとリベラル・デモクラシー論者の論争:パレート原理と権利の原理の対立を中心に 第一節 アローの定理の枠組み 第二節 政治学におけるリベラル・デモクラシー論とアローの定理 第三節 社会的選択理論におけるリベラル・デモクラシーとアローの定理 第四節 リベラル・デモクラシー論における権利の原理の基礎づけ 第五節 論争の意義と問題点 結論 第四章 人民の政治的意義:立憲主義と民主主義の対立問題を中心に 第一節 アローのデモクラシー観と現代世代 第二節 立憲主義の二つの潮流 結論 第二部 結論 |
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第三部 個人の人格と個人的選好順序 | |
第五章 「同時性」の概念への批判と「持続」の観念の導入 第一節 アローのリベラル功利主義と現在主義 第二節 ベルクソン『試論』における合理性分析と自由論 結論 第六章 「持続」の観念の定式化 第一節 すべての可能な選択肢に対する選好順序:SCIVにおけ 第二節 ジョージェスク=レーゲンによる「持続」の観念の定式化:数的連続性と直観的連続性の相違点 第三節 ベルクソンおよびジョージェスク=レーゲンの科学観 結論 第三部 結論 |
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第四部 リベラル・デモクラシー論における全員一致の仮定 | |
第七章 尊厳の政治と社会契約 第一節 決定的道徳 第二節 尊厳の根拠としての道徳的人格 第三節 ベルクソン『二源泉』における社会契約 第四節 アローとの比較 結論 第八章 社会契約とアローの定理 第一節 社会契約の構想 第二節 社会契約以降の社会的決定 結論 第四部 結論 |
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補遺 | |
おわりに | |
参考文献 | |
英語要旨 | |
索引 |