『政治の数理分析入門』
A5判232頁定価:本体2000円+税 ISBN978-4-8332-2494-9 C1031
2016年6月20日刊行
著者紹介
浅古 泰史(あさこ やすし)
1978年 生まれ
2001年 慶應義塾大学経済学部卒業
2003年 一橋大学で修士号(経済学)取得
2009年 ウィスコンシン大学マディソン校でPh.D.(経済学)取得
その後 日本銀行金融所エコノミストなどを経て
現在 早稲田大学政治経済学術院准教授
論文 Journal of Theoretical Politics,Economic Inquiryなどで発表
内容紹介
本書は,政治の数理分析について包括的に理解したい読者にとって最適な入門書。特に民主主義下の国内政治問題として,選挙,議会,利益団体,官僚などに関する数理分析を幅広く紹介している。更に一票の格差や両院制の是非,議員報酬など現在でも問題になる政治問題を数理分析の視点から議論する。ゲーム理論を学んだことがない読者を想定した平易な説明と各章末に設けた練習問題がより深い理解に導く。
いつの時代にも政府や政治家,官僚が国民にとって望ましい政策を実行していないと嘆かれる。では彼らに望ましい政策を選択するインセンティブを与えることができるのか? 感情的になりやすい政治の議論を数理分析を用いて,冷静かつ論理的に展開することで,より良い政治に導く方法を考えるヒントが数多く示される。
目次 | |
---|---|
はしがき | |
序章 | |
第1章 合理的個人の意思決定 | |
1.1 選好関係 1.2 合理的個人 1.3 効用 1.3.1 効用関数 1.3.2 期待効用 練習問題 |
|
第2章 アローの不可能性定理 | |
2.1 選挙のサイクル 2.2 アローの不可能性定理 2.2.1 アローの最低限の条件 2.2.2 定理 2.2.3 意義と問題点 2.2.4 社会厚生関数とアローの不可能性定理 練習問題 |
|
第3章 選挙制度 | |
3.1 単純多数決制 3.1.1 単純多数決制とアローの条件 3.1.2 単純多数決制の問題点 3.2 比較順序をふまえた選挙制度 3.2.1 決選投票つき多数決制 3.2.2 コンドルセ方式 3.2.3 ボルダ方式 3.3 絶対評価をふまえた選挙制度 3.3.1 承認投票 3.3.2 範囲投票 3.4 望ましい選挙制度とは 練習問題 |
|
第4章 政治的競争I:基礎 | |
4.1 ブラックの中位投票者定理 4.1.1 コンドルセ勝者が常に存在する条件 4.1.2 定理:最強の選択肢 4.1.3 ブラックの条件は厳しい条件か? 4.2 ホテリング=ダウンズの中位投票者定理 4.2.1 ホテリング=ダウンズ・モデル 4.2.2 定理:中位政策への収斂 4.2.3 意義と限界 4.3 中位政策は社会にとって望ましい政策か? 練習問題 |
|
第5章 政治的競争II:拡張 | |
5.1 多次元の政策空間 5.2 多党間競争 5.3 政策選好を有する政党 5.4 中位政策に関する不確実性 5.4.1 勝利することを目的とする政党 5.4.2 政策選好を有する政党 5.5 公約 5.5.1 コミットメント機能としての公約 5.5.2 シグナリング機能としての公約 5.5.3 公約を信ずるべきか? 5.6 政治的競争モデルのまとめ 練習問題 |
|
第6章 有権者 | |
6.1 投票行動 6.1.1 戦略的投票 6.1.2 有権者が投票する理由 6.1.3 有権者が投票しない理由 6.2 立候補 6.2.1 市民候補者モデル 6.2.2 立候補者が2人となる均衡 6.2.3 女性議員 練習問題 |
|
第7章 アカウンタビリティ | |
7.1 エージェントとしての政治家 7.2 選挙の規律効果と選択効果 7.3 過剰アピール 7.4 応用 7.4.1 政治家への報酬 7.4.2 多選禁止制 7.4.3 政治的景気循環 練習問題 |
|
第8章 議会 | |
8.1 議会内交渉 8.1.1 最後通牒ゲーム 8.1.2 既得権益 8.1.3 繰り返しゲーム 8.1.4 一票の格差 8.2 両院制 8.2.1 拒否権のモデル 8.2.2 半数を超える賛成 8.2.3 両院制の是非 練習問題 |
|
第10章 官僚 | |
10.1 官僚制 10.1.1 官僚のモデル 10.1.2 官僚の統制:行政手続法 10.1.3 日本における官僚統制 10.2 最高裁判所 練習問題 |
|
おわりに | |
最終問題 | |
付録A 数理分析の基礎 | |
A.1 ゲーム理論とは何か A.2 ナッシュ均衡 A.2.1 安全保障のジレンマ A.2.2 新党設立 A.3 サブゲーム完全均衡 A.4 情報の非対称性とゲーム理論 A.5 一様分布 |
|
付録B 確率的投票モデル | |
B.1 多次元の政策空間 B.1.1 確率的投票モデル B.1.2 平均投票者定理 B.1.3 モデルの含意 B.2 多党間競争 |
|
参考文献 | |
索引 |