『加齢現象と高齢者:高齢社会をめぐる法と経済学』
A5判504頁定価:本体5000円+税 ISBN978-4-8332-2478-9 C3032
2015年1月16日刊行
著者紹介
<著者>
R.A.ポズナー
現在 連邦第7控訴裁判所判事
<翻訳>
國武 輝久
現在 新潟大学名誉教授
内容紹介
「加齢現象」と「高齢者」をめぐり,ポズナーのアリストテレスによる「多元的自己」の観念に依拠しつつ,若年の自己と高齢の自己を別個の人格として考察する分析手法・「人的資本論」の修正拡張によるライフサイクル・モデルは,ポズナーの文理融合型の学際的・複合的な「法と経済学」による分析アプローチの特徴を際立たせ,普遍的な鳥瞰図を示すことができる。第1・2部では「実証的」,3部では「規範的」方法を駆使して「加齢現象と高齢者」を検証する。日米の違いを超えて示唆する点が多い。
具体的には,高齢者の安楽死を含む「老人の自殺(geronticide)」,雇用における年齢差別,連邦裁判官の退職年齢,加齢に伴う創造力や指導力の減退,高齢者による選挙での投票行動や陪審員としての参加活動,高齢者による不法行為や犯罪行動,老人性疾病の予防・治療をめぐる医療資源の配分,高齢者特有の行動・習慣に由来する社会的影響,高齢者の社会的地位をめぐる歴史的変化,高齢者に影響を及ぼす公共政策など,極めて多様で複雑な研究主題を分析してみせる。
目次 | |
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はじめに | |
第1部 加齢現象と高齢者―社会学と生理学および経済学による理解 | |
第1章 加齢現象の実態とその背景 | |
1 加齢現象のプロセス 2 加齢現象と生物進化の過程 |
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第2章 高齢者をめぐる過去と現在および未来 | |
1 高齢者をめぐる歴史的背景 2 人口高齢化をめぐる心理的不安 3 将来への展望とその課題 |
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第3章 加齢現象をめぐる人的資本理論 | |
1 単純なライフ・サイクル理論 2 死後の効用と終末期の問題 3 関係的な人的資本理論 |
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第4章 加齢現象に関する経済学的モデル | |
1 知識変化と割引率および加齢に伴う能力減退 2 引退に関する意思決定 3 一元的自己と多元的自己の概念 |
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第2部 複雑な応用モデルとしての経済学理論 | |
第5章 高齢者に関する経済心理学 | |
1 アリストテレスと高齢者 2 死に対する恐怖 3 心理学における高齢者の身体的・精神的な能力減退 4 宗教と投票行動および言論 |
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第6章 高齢者の行動と加齢現象の相関関係 | |
1 自動車の運転 2 犯罪の被害者および加害者としての高齢者 3 自殺 4 金銭的な吝嗇性 5 性的活動 6 労働と余暇 7 住居 8 投票行動と陪審参加 |
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第7章 加齢現象と創造力およびアウトプット | |
1 生産性と年齢:創造力と指導力の関係 2 職業分野とその相互間におけるピーク年齢の相違 3 創造的労働の性格と加齢変化 |
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第8章 裁判官の高齢化とその影響 | |
1 高齢裁判官の生産性評価 2 高齢裁判官の生産性とその根拠 3 裁判官の高齢化とその影響 |
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第9章 高齢者の社会的地位と組織の老化現象 | |
1 未開社会および農業社会 2 現代社会における高齢者の象徴的地位 3 イデオロギーの影響 4 制度化された組織のライフ・サイクル |
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第3部 規範的な論点 | |
第10章 安楽死と高齢者の自殺 | |
1 定義 2 医師幇助自殺の経済学的分析:身体的な機能停止状態の場合 3 自発的安楽死とその実行の延期 |
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第11章 社会保障と医療ケア制度 | |
1 社会保障の強制的性格 2 高齢者および男女間における医療ケア資源の配分 3 社会保障と所得再配分 4 高齢者と民主主義の理論 |
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第12章 加齢現象と高齢者をめぐる法的諸問題 | |
1 企業年金法 2 不法行為の加害者および被害者としての高齢者 3 高齢犯罪者および受刑者 4 老人性認知症と行為能力 |
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第13章 雇用における年齢差別禁止法と定年退職制度 | |
1 雇用における年齢差別禁止法の法的性格とその評価 2 雇用における年齢差別禁止法の社会的影響 3 強制的な定年退職制度をめぐる経済学 4 裁判官と大学教授の強制的退職制度 |
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訳者あとがき | |
<索引> |