『アメリカ労使関係の精神史:階級道徳と経営プロフェッショナリズム』
英題:Intellectual history of American Industrial Relations: Class Morality and Business-professionalism
A5判360頁定価:本体5000円+税 ISBN978-4-8332-2441-3 C3022
2011年5月30日刊行
著者紹介
富澤 克美(とみざわ かつみ)
1949年 群馬県に生まれる
1974年 国際基督教大学教養学部社会科学科卒業
1981年 東京大学大学院経済学研究科単位取得退学・博士(経済学)
現在 福島大学経済経営学類教授
内容紹介
本書は19世紀後半期から20世紀20年代までの労働者集団と経営学の相互浸透に焦点を当て、アメリカ企業社会における労使関係の変貌を「精神」の面から明らかにする。テイラー、科学的管理運動修正派、フォレットを俎上に載せ、彼らは労働問題をどう把握し、いかなる解決策を模索したのかを問うことによって、経営史と労働史の対話を試みる。
目次 | |
---|---|
序 | |
第1部 熟練労働者の階級道徳と経営管理 | |
第1章 19世紀後半期における職場の労使関係と熟練労働者の階級道徳 | |
1.マコーミック社とディアリング社の賃金表からみた熟練労働者の存在形態 1)鋳物工の賃金実績について 2)ディアリング社の鋳物工とインセンティヴ・システム 3)マコーミック社の鋳物工と労働者主導の職場規律 4)熟練労働者の二つのタイプと経営管理 2.労働者の階級道徳と「市民」的同格性 1)ウィリアム・H・シルヴィスと労働組合の理念 2)労働者の生活理想 |
|
第2章 生産高制限「問題」を契機とする労使関係改革と熟練労働者のエートス | |
1.生産高制限「問題」とテイラーの経営管理論 1)テイラーの管理論に表われた「労働者論」の特徴 2)道徳問題としての組織的怠業問題と労働組合 2.労働組合の労使協調路線とその帰結-国際鋳物工組合(IMU)を事例として 1)ストーブ製造業における労使協調への道と生産高制限問題 2)労使協調路線が経営と労働に与えた影響 3)IMUのモラル向上運動と熟練鋳物工の保守化 |
|
第3章 機械化の進展とアメリカ労働者文化の危機 | |
1.造型機問題に対するIMUの戦略と熟練鋳物工の態度 1)IMUの初期の戦略と組合員鋳物工の反抗 2)機械化の進展と組合員鋳物工の生産高制限 3)IMUによる造型機操作者組織化の努力 4)熟練鋳物工の保守化と階級道徳の衰退 2.「勤勉な」移民労働者と「怠惰な」ヤンキー労働者 1)NFAの機械化戦略と労働組合批判 2)勤勉な移民労働者と職場における階級的連帯の危機 3)アメリカ労働者=市民文化の危機 |
|
第2部 経営プロフェッショナリズムの発展 | |
第4章 社会改革派と科学的管理運動修正派 | |
1.社会改革派の経営者論 1)ブランダイスの専門的経営者論 2)リップマンの改革論:専門的経営者と社会運動 2.ヴァレンタインと科学的管理運動修正派 1)ヴァレンタインの「同意と能率」論 2)科学的管理運動修正派と労働組合の連携 |
|
第5章 経営プロフェッショナリズムの誕生 | |
1.ヘンリ・デニスンの労使関係改革論 1)人事管理改革と組織改革 2)労使関係改革 2.ハーロウ・パースンの「経営者」論 |
|
第6章 余暇・消費問題と労使関係の新たな「精神」の誕生 | |
1. 問題の設定 1)AFLの戦略転換と雇用主類型 2)1920年代の経営プロフェッショナリズム 2.余暇運動とAFL 1)AFLとPRAAの連携 2)余暇運動と新余暇倫理論 3.余暇・消費論争に表れた雇用主たちの主張 1)伝統的保守派の労働倫理論 2)消費の福音派の個人主義的消費主義論 3)経営プロフェッショナリズム派の「労働生活の再編統合化論」 4.労使関係改革と新たな精神の誕生 1)ボルティモア・オハイオ鉄道における労使協調計画とAFL労働者教育の転換 2)フォレットの労使関係改革論とその戦略的立場 |
|
結語 | |
注 | |
引用文献 | |
アブストラクト | |
索引 |