『現代日本の自治会・町内会: 第1回全国調査にみる自治力・ネットワーク・ガバナンス』
現代市民社会叢書第1巻
英題:Neighborhood Associations and Governance in Japan: Self-governance, Social Capital, Social Networks, and Local Governance based on The First National Survey of Thirty Thousand Associations
A5判264頁 定価:本体3000円+税 ISBN978-4-8332-2420-8 C3031 10月08日刊行
著者紹介
辻中 豊(つじなか ゆたか)
1954年 大阪府生まれ
1981年 大阪大学法学研究科単位取得退学博士(法学), 京都大学
現在 筑波大学大学院人文社会科学研究科教授
Robert Pekkanen (ロバート・ペッカネン)
1966年 ロードアイランド州生まれ
2002年 ハーバード大学大学院政治学研究学科修了 Ph.D.(政治学)
現在 ワシントン大学ジャクソン国際スクール日本研究学科学科長・助教授
山本 英弘(やまもと ひでひろ)
1976年 北海道生まれ
東北大学大学院文学研究科博士課程修了 博士(文学)
現在 筑波大学大学院人文社会科学研究科研究員
内容紹介
21世紀も早や10年を経過し,科学技術「進歩」や社会の「グロー バリゼーション」の進行によって,世界が否応なく連動しつつあるのを我々は日々の 生活の中で実感している。それに伴って国家と社会・個人およびその関係の在り方も 変わりつつあるといえよう。
本叢書は主として社会のあり方からこの問題に焦点を当 てる。2006年8月から開始された自治会調査を皮切りに電話帳に掲載された社会団体, 全登録NPO,全市町村の4部署と2008年1月までの1年半の間,実態調査は続けられ,合 計4万5千件におよぶ膨大な市民社会組織と市区町村に関する事例が収集された。この 初めての全国調査は従来の研究の不備を決定的に改善するものである。本叢書はこの 貴重なデータを基礎に,海外10カ国余のデータを含め多様な側面を分析し,日本の市 民社会を比較の視座において実証的に捉えなおそうとするものである。
1巻は自治会,町内会,町会,区会,部落会などとよばれる近隣住民組織1(総称して「自治会」)は日本中のほぼすべての市区町村(98%以上)に存在し,総数およそ30万団体にのぼり,地域住民の大半が加入している。現在自治会に対する期待が高まっている(NHK総合テレビの人気番組「ご近所の底力」(2003年4月~参照)が,これらは市民社会組織(civil society organization)としての特徴を表している。国家,市場,家族とは相対的に独立した市民社会領域は,個々の市民間の連帯を醸成したり,市民生活に必要な社会サービスを供給したり,政治領域や経済領域と個々の市民や家族を架橋することが期待されている。
目次 | |
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まえがき | |
第1章 日本の市民社会における自治会 | |
1.自治会とは 2.日本の市民社会と自治会 2.1.市民社会とガバナンス/2.2.日本の市民社会 3.分析の視角 3.1.注目すべき自治会の諸側面/3.2.分析の視角 4.調査の方法 5.本書の構成 |
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第2章 自治会組織のプロフィール | |
1.はじめに 2.近隣住民組織の名称 3.自治会の来歴と発足時期 3.1.自治会の来歴/3.2.自治会数の推移/3.3.自治会の発足時期 4.自治会の規模 5.財政規模 6.自治会の類型化 7.本章のまとめ |
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第3章 自治会の組織運営 | |
1.はじめに 2.自治会組織の役割についての自己認識 3.組織構造と運営 3.1.法人格と規約/3.2.組織の構成/3.3.総会と役員会/3.4.会長・役員の選出 4.自治会長と役員のプロフィール 4.1.自治会長のプロフィール/4.2.自治会役員と主な担い手 5.本章のまとめ |
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第4章 社会関係資本と自治会活動への参加 | |
1.はじめに 2.自治会への加入率 3.住民のつきあいと自治会活動への参加 3.1.住民のつきあい/3.2.住民による自治会活動への参加/3.3.社会関係資本指数の作成 4.社会関係資本の規定因 4.1.要因の検討/4.2.分析 5.本章のまとめ |
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第5章 自治会と他団体との連携 | |
1.はじめに 2.地域団体との連携関係 2.1.様々な地域団体との連携/2.2.自治会との連携からみる団体の構造 3.地域団体との連携の性質 3.1.活動の連携/3.2.情報の授受をめぐる関係/ 3.3.補助金・分担金の授受をめぐる関係/3.4.自治会長のネットワーク 4.団体との連携関係の規定因 4.1.要因の検討/4.2.分析 5.NPOとの連携 6.本章のまとめ |
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第6章 自治会の社会サービスの供給 | |
1.はじめに 2.社会サービス活動の実施状況 2.1.社会サービス活動の実施率/2.2.支出の割合/2.3.地域活動の活発さ 3.社会サービス活動からみる自治会の類型 3.1.活動実施からみた自治会の類型/3.2.自治会活動類型と地域環境 4.自治会活動類型の規定因 4.1.要因の検討/4.2.分析 5.本章のまとめ |
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第7章 市町村との協力・連携 | |
1.はじめに 2.行政協力の制度 3.行政協力の内容 3.1.委託の内容(市区町村調査)/3.2.自治会における市区町村との連携(自治会調査)/ 3.3.委託業務に対する評価(自治会調査) 4.市区町村との協力・連携の規定因 4.1.要因の検討/4.2.分析 5.市区町村の自治会支援策 5.1.自治会支援策の実施状況(市区町村調査)/ 5.2.自治会支援策に対する自治会の評価(自治会調査) 6.本章のまとめ |
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第8章 自治会による政治参加 | |
1.はじめに 2.自治会による要望活動(ロビイング) 2.1.要望活動のルート/2.2.市区町村への対応への評価/2.3.動員型の活動/2.4.モニタリング 3.要望ルートの規定因 3.1.要因の検討/3.2.分析 4.自治会の選挙運動 4.1.選挙運動の実態/4.2.選挙運動の規定因/ 5.自治会の自己影響力 5.1.要望活動と成功経験・自己影響力/5.2.受け入れ経験・影響力の規定因 6.本章のまとめ |
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第9章 結論:地域ネットワークと媒介する市民社会組織 | |
1.自治会類型ごとにみる特徴 1.1.共通する自治会像/ 1.2.都市部・大規模/非都市部・小規模自治会の相違 /1.3.村落型の自治会 2.自治会からみる日本の市民社会 2.1.地域内外のネットワークの中の自治会/ 2.2.制度遺産としての,行政媒介型市民社会組織/ 2.3.地方自治政策と市民社会組織としての自治会 3.今後の課題と展開の可能性 3.1.市区町村と関係のない地域に存在する自治会との比較/3.2.政策パフォーマンスとの関係/ 3.3.他の市民社会組織との比較/3.4.住民自治組織の国際比較 |
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補論 低加入率・小規模自治会のすがた | |
1.問題の所在 2.低加入率・小規模自治会の実態 3.まとめ |
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付録1.調査実施のプロセス | |
付録2.調査票(自治会調査,市区町村調査) | |
引用文献 | |
アブストラクト |