木鐸社

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『法と疫学:法政策における科学的手法の活用』

原題:Case Studies in Forensic Epidemiology, Plenum Pub.Corp., 2002
A5判320頁予価:本体3500円+税 ISBN4-8332-2410-9 C3032
2008年11月30日刊行予定

著者紹介

<著者>
サナ・ルー(ケイス・ウェスタン・リザーヴ大学医学部疫学・生物統計学科疫学・生物統計学准教授)

<監訳者>
太田 勝造(東大大学院法学政治学研究科教授)
津田 敏秀(岡山大学大学院環境学研究科教授)

<訳者>
平田 彩子(法社会学)
ノミンチメグ・オドスレン(比較法)
佐伯 昌彦(法社会学)

内容紹介

 疫学は,世界を認識し理解する仕方を提供するとともに,われわれが研究調査の対象とする社会集団における健康と疾病の分布パタンと世界を関連付ける仕方を提供する。このように捉えれば,疫学は,現実の諸相を関連付ける参照点を提供する。本書の中心的な対象は,広く捉えた法の文脈における疫学の様々な利用である。例えば,裁判所の法廷において疫学は,社会に生じた損害と,責任を追及される義務違反者との間の関連の有無に光を当て,健康と環境の改善のための改革を実現しようと努力するコミュニティと,そのような努力の成否に大きな影響力を有する立法者や政策立案者との関係に光を当て,さらには,社会の「主流派」とされる者たちと,疾病ないし疾病と思い込まれている状況のために差別されるようになったり,差別され続けている者たちとの間の関係に光を当てることができる。本書がとりわけ試みたいのは,何が疫学でそれを役立てるにはどのように使わなければならないかについての読者の固定観念に挑戦し,読者に「知的越境」の興奮を味わってもらうことである。われわれが調査研究の対象とする集団,すなわちわれわれの社会について,われわれが研究する疾病について,われわれの行動の下部構造とも形成因ともなっている社会システムについての,より完全な理解に読者には是非到達していただきたい。

目次
日本語版への序文
原著序
原著謝辞
第1章 法廷における疫学:異なる目的と分岐した手続
 疫学と法:異なる目的
 疫学と法:手続きの分裂
 疫学における因果関係/  法における因果関係
 サンプリング・テクニック(抽出技法)
 法における因果関係
 疫学的因果関係は法的因果関係に適合する
 法と疫学の調和/  疫学,倫理,および専門家証人
 議論のための問い
第2章 事例研究(1)シリコン豊胸手術訴訟事件
 シリコン豊胸手術の歴史
 疫学的知見と陪審評決
 疫学研究の経緯/事後的説明
 議論のための問い
第3章 事例研究(2)大腸菌に関する疫学調査
 大腸菌についての疫学
 疫学による調査
 最初の調査/ケース・コントロール調査(症例対照研究)
 児童に対するコーホート研究/職員に対するコーホート研究
 疫学調査の知見
 ディスカヴァリ(証拠開示手続き)
 原告側の主張/被告側の主張
 事実審理(トライアル)
 原告側の主張/被告側の主張
 議論のための問い
第4章 疫学,立法,および規則制定
 立法機関
 立法権/法律制定過程/立法への影響力行使
 行政機関
 行政機関の権限/行政監督と行政活動
 行政機関の規則制定に対する監督/行政機関による規則の作成
 行政機関が作成した規則に対する不服申し立て/不確実性下での行政機関の行動
 議論のための問い
第5章 事例研究(3)連邦食品医薬品局とシリコン豊胸手術
 連邦食品医薬品局と医療器具規則
 連邦食品医薬品局とシリコン豊胸注入物
 連邦食品医薬品局の対応についての評価
 議論のための問い
第6章 事例研究(4)タバコ規制
 連邦食品医薬品局と薬品規制
 タバコとその影響
 連邦食品医薬品局の対策とタバコ
 議論のための問い
第7章 法,疫学,およびコミュニティと市民運動
 市民運動の定義
 コミュニティおよび市民運動の発展の段階
 第1段階 コミュニティにおけるニーズ・アセスメント/
 第2段階 調査のための疫学の利用/
 第3段階 市民団体と市民運動のための戦略形成/
 疫学,市民運動,そして倫理
 議論のための問い
第8章 事例研究(5)アルコールと飲酒運転
 アルコールと飲酒運転
 アルコールの生理的効果/アルコール飲料の特性
 運転による障害や死亡に関する疫学
 飲酒運転を許さない母の会
 道徳心に訴える/目標と戦略/組織的特徴
 議論のための問い
第9章 事例研究(6)注射器支給プログラム
 注射器支給プログラムとは何か
 注射器支給と危害の軽減/注射器支給プログラム:歴史と具体例
 注射器支給プログラムの基盤
 注射器支給による薬物使用:行動と生物学
 薬物の使用と濫用による影響/肝炎と注射器による薬物使用
 公共政策と注射器支給プログラム
 積極的な市民運動と注射器支給プログラムの設立
 議論のための問い
第10章 疫学,法,そして社会的文脈
 逸脱行動の社会的文脈
 逸脱行動に対する規範的な見方/社会的観衆アプローチ/「逸脱者」の反応
 疫学と法の連結部分に位置する逸脱
 議論のための問い
第11章 事例研究(7)性,ジェンダー,および性的特質
 性とは何か
 ジェンダー・アイデンティティと社会における男女の役割
 性的指向
 性転換症とトランスジェンダー
 性転換症/トランスジェンダー
 同性愛,科学,変容する社会的文脈
 科学と医療における同性愛:見解の変化  同性愛,科学的基本的人権
 議論のための問い
第12章 事例研究(8)マリファナの医学的用途
 マリファナ:使用と規制
 ことの始まり/薬品規制の開始
 時代の変化:医療目的でのマリファナの使用に対する許可
 薬としてのマリファナの科学
 HIV・エイズとマリファナ/他の症状に対するマリファナの使用
 マリファナの効果を検証する
 全米医学研究所/連邦食品医薬品局の要求する手続き
 マリファナを合法的薬品にしようとする市民運動
 議論のための問い
解説にかえて:ヒュームの問題と原因確率=津田敏秀
監訳者あとがき=津田敏秀・太田勝造
索引

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