『日本型教育システムの誕生』
英題:The Establishment of a Post-War Educational System in Japan
ISBN978-4-8332-2403-1 C3031 定価:本体4500円+税
A5判352頁2008年6月20日刊行
著者紹介
徳久 恭子
1973年 千葉県に生まれる
1996年 立命館大学法学部卒業
2003年 大阪市立大学大学院法学研究科修了
大阪市立大学都市研究プラザ博士研究員などを経て
4月1日より,立命館大学法学部准教授 博士(法学)
「アメリカン・デモクラシーの逆説」『年報政治学』(2005年)
「教育政策におけるマクロ・トレンドの変化とその帰結」『政策科学』(2006年)など
内容紹介
敗戦による軍国主義から民主主義への体制転換において,当初教育改革は最優先課題であった。それは米国の支持する「国民の教育権」と日本の支持する「教権」の理念・方法をめぐる対立と妥協の中で実施され,教育基本法を頂点とする日本型教育システムを築いた。占領後期,GHQの政策転換により,教育改革は大蔵省の緊縮均衡財政・自治庁の総合行政との政策関連による調整を一層迫られた。従来の保革対立アプローチの呪縛を脱し,アイディアアプローチを用いて占領期を通じて教育改革は完遂されたものとして捉える視角からこれを論証する。混迷を極める現在の教育改革論議に資する。
目次 | |
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はじめに | |
序章 問題の所在 | |
1 教育改革の時代 二つの教育基本法/ 教育権の所在/ 戦後教育改革の分析視角/ 2 本書の構成 |
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第1章 分析枠組み | |
第1節 占領期の教育改革をめぐる諸見解 1 対日占領政策研究 2 知識人主導論 3 国内政治過程論 4 これまでの議論の特徴とその問題 第2節 分析の基礎概念 1 制度をめぐる理論 2 政策過程におけるアイディア アイディアの定義/ 制度と政策アイディア/ 規範/ 言説的制度論/ 第3節 本書の仮説 |
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第2章 教育理念としての民主主義 | |
第1節 アメリカの対日占領政策とその思想的基盤 1 アメリカの対日占領政策 2 アメリカにおける民主主義 第2節 戦前の教育遺産 1 近代国家建設と「国家的行為」としての教育 2 自由教育の系譜と制度遺産 大正自由教育/ 二つの教師像/ 大正期の教育遺産/ 第3節 教育改革と二つの民主主義観 1 教育改革の胎動 2 占領開始におけるCIEの基本態度 3 民主主義をめぐる理念の一致と差異 |
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第3章 「教権」というアイディア | |
第1節 「教育権」をめぐる理解 第2節 二つの報告書―第一次米国教育使節団の来日 1 第一次米国教育使節団報告書 2 日本側教育家委員会報告書 第3節 教育基本法制定の政治過程 1 田中文相下の教育改革とCIE 2 教育基本法構想の具現化 3 教育基本法案をめぐる文部省とCIEの対立 4 「教権」という理念 |
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第4章 「教権」をめぐる政治過程 | |
第1節 二つの教師像と「教権」 1 文部省の位置 2 仲介者としての政党 3 文部省の策動と1946年の労働攻勢 教員身分法案作成の契機/ 怒濤の労働攻勢と文教振興議員連盟による調停工作/ 4 教員身分法案と労働協約 5 国内の反響と超党派的合意の素地 第2節 戦後教育の対立軸―超党派的合意の図式 1 二つの対立軸 2 教育改革の担い手たち GHQと国内行政機関/ 知識人・緑風会/ 日本自由党/ 民主党/ 国民協同党/ 社会党/ 共産党と日教組/ 3 諸アクターの配置と対立軸に起因する争点 |
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第5章 「教権」の制度化―片山内閣から第二次吉田内閣 | |
第1節 教育委員会法をめぐる政治過程 1 教育刷新委員会・第三特別委員会の審議 2 教育委員会法の立案過程 3 教育委員会法案をめぐる国会審議 4 制度移入に残された問題―再解釈の限界/ 第2節 教育公務員特例法をめぐる政治過程 1 教員身分法案の作成と国家公務員法 2 政令201号と教育公務員の任免等に関する法律案 3 教育公務員特例法の制定とそこに残された問題 国家公務員法の改正と教育公務員特例法案/ 残された争点/ |
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補論 一致議会からの継続法案の行方 | |
第6章 「教権」をめぐる攻防―第三次吉田内閣 | |
第1節 教育改革路線の継承とその障害 1 「教権」と教育予算の確保 緊縮均衡財政と義務教育費問題/ 文部省の脆弱性と予算措置の限界/ シャウプ勧告と標準教育費問題/ 占領政策における優先順位の変化/ 2 変化の前兆―教育委員会法改正と地方公務員法 アメリカの反共政策と教員の政治活動問題/ 教育委員会法の一部を改正する法律案/ 圧力団体としての教職員組合の是非/ 地方公務員法と公立学校教員の身分/ 第2節 政策連関に起因する教育政策の危機 1 教育公務員特例法の改正 参議院文部委員会における修正過程/ 衆議院文部委員会の動向と両院協議会/ 2 義務教育費国庫負担法をめぐる政治過程 義務教育費国庫負担法案とセクショナリズム/ 衆議院文部委員会の審議と閣内調整/ 参議院文部委員会と義務教育費国庫負担法案の行方/ 義務教育費国庫負担法の投じた問題/ 3 教育委員会法改正と超党派的教育政策の限界 各種委員会の勧告と制度改正への道/ 教育委員会法の改正をめぐる動き/ 国会審議における利益と理念の相克/ 政策連関と理念の有効性/ | |
引用文献 | |
参考資料 | |
アブストラクト | |
索引 |