『日本における市民社会の二重構造:政策提言なきメンバー達』
現代世界の市民社会・利益団体研究叢書別巻
英題:Japan's Dual Civil Society: Members without Advocates, Stanford 2006
ISBN978-4-8332-2399-7 C3031 定価:本体3000円+税
A5判272頁2008年2月27日刊行
著者紹介
著者:Robert Pekkanen(ロバート・ペッカネン)
1966年 ロードアイランド州生れ
2002年 ハーバード大学大学院政治学研究学科修了Ph.D. (政治学)
現在 ワシントン大学ジャクソン国際スクール日本研究学科学科長・准教授
訳者:佐々田 博教(ささだ ひろのり)
1974年 熊本県生れ
カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業
現在ワシントン大学大学院政治学研究科博士課程在籍 Ph.D. Candidate(政治学)
Youth and Nationalism in Japan,The SAIS Review, 2006
内容紹介
本書の目的は,市民社会の発展パターンと政府のインセンティブ構築との因果関係を明確にすることである。日本の市民社会の特徴は二重構造を持つ(多数の小規模団体,地元に根ざした団体(約30万の自治会など)の存在と,独立し高度に専門職化した大規模団体(グリーンピースなど)が非常に少ない状態の並存)を種々の市民社会調査データや民法の起草過程の検討によって示す。
厳しい法律体系,資金調達方法の制約,間接的な規制(例えば,郵便規定),および政府の構造が作り出す政治的機会,これら全ての要素が日本における市民社会の発展に大きな影響を与えてきた。
日本の二重構造をもつ市民社会は,社会関係資本の創出と共同体の形成を通じて民主主義を支えるが,公共領域のあり方や政策決定に影響を与える大きな専門家団体を持たない。つまり日本の市民社会は,「政策提言なきメンバー」によって成り立っていることを日米の比較によって論証する。
目次 | |
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まえがき | |
日本語版へのまえがき | |
ノート | |
第1章 序論 | |
市民社会の再定義 理論的背景 議論 日本市民社会の分析的枠組み 文化論による説明/ 社会不均一性論による説明/ 政治制度による説明/ 規制枠組み:団体の法的規制,財政,優遇税制 政治機会構造 その他の間接的影響:対立管理と郵便料金 最近の変化 むすび | |
第2章 比較の観点から捉える日本の市民社会 | |
比較の観点から捉える日本の市民社会:日本に特有なものは何か 団体の数 個人レベルの団体参加/専門職化 むすび |
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第3章 法規制の枠組み | |
比較の観点から見た日本の法律 制定法/ 海外からの導入 団体結成に関わる規制 法人の資格/ 法人格がない場合の運営上の支障/ 認可手続き/ 公益性の定義/ NPO新法の影響 法人団体の法的分類 公益法人:狭義の定義/ 公益法人:広義の定義/ その他の団体 団体運営の規制 報告義務/団体の調査/団体の解散 税 制 税制措置/ 慈善寄付への課税/ 低税率の落とし穴:税金控除の定義/ 税金控除の認定 非営利団体への公的資金援助 団体設立 正当化 NPO法にみられる論拠/ 間接的な法律 むすび |
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第4章 自治会と地域市民社会 | |
自治会とは何か? 自治会の会員/ 自治会は本当に自由意志に基づいた団体なのか?/ 自治会の活動 自治会に参加するのは誰か? 自治会,政党,性別,政治家/ その他の組織的特徴 自治会の歴史 自治会の前身/ 自治会の興隆/ 軍国主義下の自治会/ 自治会の廃止と再生/ 今日の自治会 政府と自治会の関係 政府の下部組織としての自治会/ 自治会が政府のためにすること/ 政府が自治会にすること:地域コーポラティズム 自治会と国家:政治制度からの議論 なぜ自治会は存在するのか?/ 武蔵野市 政府支援を受けない自治会/ 市民社会団体としての自治会 政策提言なきメンバーの集団としての自治会 自治会と政策提言/ 自治会と社会関係資本 |
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第5章 市民社会に対する規制の政治背景 | |
民法第34条の起草 NPO法 NPO法の背景/ 阪神大震災 国家と市民社会の関係の再定義:立法段階での論争 第1ステージ:政治家 vs. 官僚/ 第2ステージ:社民党とさきがけ vs. 自民党 vs. 政調会/ 自民党政策の紆余曲折:左へ方向転換/ 自民党政策の紆余曲折:右へ方向転換/ 第3ステージ:選挙政治/ 民主党の台頭/ 自民党政策の紆余曲折:再度左へ方向転換/ 第4ステージ:最終可決/ 秋期国会:最後の抵抗/ 春期国会:最終可決/ 1998年NPO法の政治的意義 2001年度税制改正と民法第34条の改正 2001年税制改正 民法第34条の改正? むすび |
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第6章 結論:政策提言なきメンバー達 | |
日本の市民社会における二重構造 歴史の重要性:決定的な転機,「氷河期」と雪どけ 明治時代の重要性:第一の転機/ 市民活動の「氷河期」:第二の転機/ 雪どけ:第三の転機 ゲームのルールの決定:「規制論争」議論 日本の規制枠組み:なぜ長い間変化がなく,現在急激に多くの変化が生じているのか 政策提言なきメンバー 結 論 |
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付録 データセット | |
JIGSデータセット GEPONデータセット |
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付録 | |
表-1 各種団体の割合 付録 表-2 NPO法関連年表 付録 表-3 NPO法作成に関わった団体 付録 表-4 NPO法案の要旨の比較 |
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訳者あとがき | |
参考文献 | |
索引 |