『マキァヴェッリの拡大的共和国:近代の必然性と「歴史解釈の政治学」』
英題:Machiavelli’s Expansive Republic: Modernity and Politics of Historiography
A5判500頁定価:本体6000円+税 ISBN978-4-8332-2390-4 C3032
2007年4月7日刊行
著者紹介
厚見 恵一郎(あつみ けいいちろう)
1967年 東京都に生まれる
1990年 早稲田大学政治経済学部卒業
1996年 早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程退学
早稲田大学社会科学部助手,専任講師,助教授を経て,プリンストン大学訪問研究員(1999-2000年),ハーバード大学訪問学者(2000-2002年)
現在 早稲田大学社会科学総合学術院教授
博士(政治学)
内容紹介
本書は,<大衆的近代の僭主的先導者>というシュトラウス的なマキァヴェッリ像を,よりデモクラティックなものとして読み直すために,彼の「歴史解釈の政治学」に手法と内容の両面において着目し,マキァヴェッリのうちにある歴史的ローマ――共和主義的ローマも含めて――と,彼自身によるその改変を考察する。
ルネサンス的秩序観念の必然性(ネチェシタ)に迫られつつ「歴史解釈の政治学」を通じて彼が「発見」した「ローマ」は,調和と均衡と自足ではなく,分裂と民主的性質と獲得志向性を特徴とする点で,明らかに「近代」的な「拡大的共和国」であり, 移民や新市民を積極的に受け入れ,護民官制度を通じてその声を政治に反映させ,同時にその平民を武装させることによって 共和国は帝国的拡大を志向せざるをえなかったことを論証する。
目次 | |
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序論 マキァヴェッリ,歴史解釈の政治学,「近代」 | |
第1節 マキァヴェッリ思想の再構成をめぐって 第2節 歴史解釈の政治学 第3節 マキァヴェッリ思想の「近代」性と歴史性 第4節 本書の構成 |
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第1部 マキァヴェッリのコスモス | |
はじめに 第1章 占星術,天,フォルトゥナ 第1節 マキァヴェッリと秩序の政治学 第2節 ルネサンスの秩序観とマキァヴェッリ――占星術的宇宙論から魔術的宇宙論へ 第3節 神,天,フォルトゥナ 第4節 力と行為の優位――政治的現実主義の生誕 第2章 魂,野心,才知 第1節 政治的人間と「人間本性」論 第2節 魂と精気 第3節 欲望・気概・野心――政治的人間の情念 第4節 賢慮と才知――政治的人間の理性 |
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第2部 マキァヴェッリと歴史叙述の伝統 | |
はじめに 第3章 『君主論』の修辞術と『フィレンツェ史』の実践的歴史叙述 第1節 「事物の実効的真実」と歴史 第2節 修辞術と歴史――マキァヴェッリと修辞術の伝統 第3節 解釈術と歴史――ルネサンスにおける解釈術の諸類型 第4節 時間の政治学――ルネサンスの過去概念 第5節 マキァヴェッリと実践的歴史叙述の系譜 第4章 循環史観と生の意味 第1節 哲学から歴史へ――教訓手段の獲得と自立道徳の成立 第2節 循環史観と生の意味――過去の教訓と現在 |
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第3部 マキァヴェッリと「共和主義」 | |
はじめに 第5章 「政治的人文主義」とマキァヴェッリ 第1節 フィレンツェ人文主義と共和主義の伝統:civic humanism研究の現状をめぐって 第2節 サルターティとブルーニ 第3節 マキァヴェッリと書記官長職: フィレンツェにおける「共和主義」の残存 第6章 マキァヴェッリと共和主義の概念 第1節 マキァヴェッリの共和主義的解釈 第2節 『リウィウス論』と政体論 第3節 共和的概念とマキァヴェッリ:平民,自由,祖国愛 第7章 ローマ史解釈と混合政体論 第1節 内紛と混合政体論をめぐるローマ史解釈 第2節 君主,貴族,平民 |
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第4部 統治術としての政治学 | |
はじめに 第8章 国家理性論,君主論,僭主論 第1節 『君主論』の文脈と意図 第2節 stato,vivero politico,ragione di stato 第3節 『リウィウス論』の政体設立論――新君主国の意義 第9章 統治制度としての法律と宗教 第1節 新君主の統治心術 第2節 教育と宗教 第10章 軍事と政治――『戦術論』と民兵論 第1節 帝国的拡大と政治的現実主義 第2節 軍事的自立と対外拡大政策 第3節 『戦術論』をめぐって 第4節 『戦術論』における政治論と軍事論の関係 |
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むすび――拡大と5つのローマ | |
引用 | |
参考文献 | |
索引 |