木鐸社

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『ロマン主義から石牟礼道子へ:近代批判と共同性の回復』

英題:From Romanticism to Michiko Ishimure
A5判262頁定価:本体3000円+税 ISBN978-4-8332-2385-0 C1030
2007年3月10日刊行

著者紹介

岩岡 中正(いわおか なかまさ)
1948年 熊本市生れ
1970年 九州大学法学部卒業
1976年 九州大学大学院法学研究科博士課程単位取得
現在 熊本大学法学部教授(政治思想史専攻)
著書
『詩の政治学―イギリスロマン主義政治思想史研究』木鐸社,1990年 他

内容紹介

 本書は政治思想史研究の重要なテーマである共同性の再構成の問題について,日英比較史の視点から新たな「共同性のパラダイム転換」論を提示する。イギリス・ロマン主義を近代化によって破壊された共同性の回復運動と捉え直し,水俣の公害問題に取り組む石牟礼氏の思想の中に全人的人間の復活をみようとする。

目次
はじめに
第Ⅰ部 時代転換――解体から再生へ
1章 思想史における「1968年」――「近代の終わり」のはじまり
はじめに 一  近代の変容――人間の原理から抑圧の原理へ
(1) 人間/(2) 社会/(3) 自然
二 1968年と近代批判
(1) 人間の回復/(2) 理性の虚構/(3) 国家の虚構性 おわりに
2章 パラダイム転換と時代再生――近代と近代後をめぐって
はじめに――時代転換と「近代」
一 近代――解体から普遍の形成へ
(1) 中世的普遍の解体と近代の形成 (2) 近代という普遍の支配
二 近代の解体の諸相
(1) 先駆としてのロマン主義/ (2) パラダイム転換の諸相
三 再生へ向けて――二つの再生論
(1) 鶴見和子の内発的発展論/ (2) 石牟礼道子とロマン主義的再生論
第Ⅱ部 ロマン主義研究と共同性
3章 共同性の諸相――イギリス・ロマン主義
はじめに――ロマン主義の課題
一 コールリッジと文化的共同性
(1) 人間と社会の再生/ (2) 国民教会(National Church)と文化的共同性
二 ワーズワスと民衆的共同性
(1) 産業革命とワーズワス/ (2) 羊飼いと農民の完全な共和国/ (3) スペイン人民と民衆的共同性
三 シェリーと詩的共同性
(1) フランス革命と産業革命/ (2) 対抗原理としての詩/ (3) 詩・改革・共同性
おわりに
4章 ロマン主義における共同性――ワーズワスとシェリー
はじめに
一 人間と社会
二 人間と自然
三 共同性の回復
(1)ワーズワスと共同体/ (2)シェリーと「愛」
おわりに
5章 個性と共同性――ミルとロマン主義
はじめに 一 共同性の回復
(1) 近代化と共同性/ (2) ロマン派と再生モデル
二 個性と共同性
(1)ミルとコールリッジ――「コールリッジ論」をめぐって/ (2)ミルと発展モデル――個性と共同性
おわりに――開かれた共同性
(1) 再生モデルを超えて/ (2) 開かれた共同性と現代
第Ⅲ部 石牟礼道子のロマン主義――文明論と共同性論
6章 共同性のパラダイム転換――石牟礼道子と共同性の回復
はじめに (1) パラダイム転換と内発的共同性/ (2) 石牟礼道子におけるロマン主義的再生論
一 さまよえる魂――近代批判の射程
(1) 原罪としての近代/ (2) 共同性の喪失
二 詩と再生――自己創出する言葉と思想
(1) 「視る」ことと幻視/ (2) 「書く」こと/ (3) 詩――内発し受胎する全体
三 海と渚――共同性の回復
(1) 共同世界像/ (2) 共同性の構造/ (3) 共同性・感受性・文明
おわりに
7章 知のパラダイム転換と共同性――石牟礼道子と共同性の知
はじめに――共同性と知のあり方
一 近代知とその限界――近代の虚妄
(1) 近代知批判―感受性と関係性の喪失/ (2) 近代システム批判―市民主義を超えて/ (3) 日本の近代化と民衆―近代知の貧困
二  知の再生――根源からの回復
(1) 全体知と共同性の知/ (2) 根源の知―内発,再生,循環,物語,身体/ (3) 感性と詩/ (4) 魂の雄雄しさ,あるいは徳について
おわりに――新しい共同性の知へ
8章 神話の回復と新しい知――能「不知火」と現代
はじめに
(1)能「不知火」と知の転換 / (2)現代思想家としての石牟礼道子/ (3)ロマン主義と石牟礼道子
一 近代を超える神話――「不知火」を読む
(1)終末の兇兆/ (2)犠牲と狂乱/ (3)救済と再生/ (4)祝婚の舞/ (5)「不知火」のメッセージ――近代を超える祈り
二 石牟礼道子と脱近代の知――「不知火」における表現と思想
(1)「不知火」における表現/ (2)「不知火と」脱近代知の輸出
おわりに
補論Ⅰ 石牟礼道子と現代
補論Ⅱ 「対談」石牟礼文学の世界――新作能「不知火」をめぐって/th>
補論Ⅲ 共生の思想構造――近代を超えて
補論Ⅳ 地域思想の可能性――思想の脱近代
あとがき

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