木鐸社

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『政治のリアリティと社会心理:平成小泉政治のダイナミックス』

英題:Political Reality and Social Psychology: The Dynamics of the Koizumi Years
A5判320頁定価:本体4000円+税 ISBN978-4-8332-2384-3 C3031
2007年1月31日刊行

著者紹介

池田 謙一(いけだ けんいち)
1955年生まれ
1982年東京大学大学院社会学研究科社会心理学専門課程単位取得 中退
1992年東京大学文学部助教授
現在,東京大学大学院人文社会系研究科教授
著書『転変する政治のリアリティ』木鐸社,第2回島田賞受賞
『ネットワーキング・コミュニティ』東大出版会

内容紹介

 本シリーズの基礎をなすJESⅢパネル調査は,九波に及ぶそれで,21世紀初頭,小泉政権期をほぼカヴァーし,1976年JABISS調査から数えても30年の歴史と継続性を有し,また国際比較の標準(NESやCSES2)調査項目とも一致するよう工夫している。  本シリーズは,これらの普遍性・歴史性を踏まえたうえで,JESⅢのデータを用い,小泉政権の固有性を明確にする。
 本書は更に視野を拡げ,投票行動の背景をなす社会関係資本,私生活志向,インターネット利用,メディアのパワーなどの政治参加・社会参加をめぐる長期的な諸条件をより理論的に展望し,日本人の価値観の変容と連続性を様々な手法を用いて検証する。日本を代表する研究者による類例のない政治学研究 第一弾。

[シリーズ21世紀初頭日本人の選挙行動] 以下 続刊予定
 平野 浩著『変容する日本の社会と投票行動』2007年5月
 小林良彰著『市民社会における選挙過程の動態:選挙行動における連続と変化』2007年11月

目次
はじめに
第1部:小泉政治のリアリティ
第1章リアリティの構造と社会心理:「小泉効果」を前にして(池田謙一)
1.社会のリアリティ
2.社会システムのダイナミックな認識
3.「期待の政治」の解剖
4.JESⅢ調査データの射程
5.2001-2005年の基礎的な変化
 ○2001-2005年の投票行動の変化
 ○小泉に対する感情温度の変動
 ○将来期待と業績評価
 ○経済状態に関する認識
 ○政権担当能力評価
2章.リアリティのダイナミックス:2005年に至る投票行動の基本分析(池田謙一)
1.2003年の自民党に対する「小泉効果」の分析
2.2004年の自民党に対する「小泉効果」の分析
3.2005年の自民党に対する「小泉効果」の分析
4.効果の姿を視認する
5.「小泉効果」の意味
6.RQ 1: 経済状況の回復は貢献していたか
7.RQ 2: 争点投票が期待の政治を再点灯させたのか
8.RQ 3: マニフェストはそこにどのように貢献したのか
9.RQ 4: 民主党の政権担当能力評価は自民党への票を落とす要因たり得たか
10.RQ 5: 期待の政治の再点灯はメディアによってもたらされていたのか
11.ポピュリストと「入り口の政治」
補遺.「曽我さん効果」
3章.政党スキーマ・小泉内閣スキーマから見る小泉政権(稲増一憲・池田謙一)
1.認知的アプローチとスキーマ理論
2.自由回答の分析
3.自由回答分析についての概要
4.JESⅡからの不変化
5.小泉政権における特徴: 変化はどこで生じたか
6.小泉内閣に対する自由回答の変化
7.政党スキーマと小泉内閣スキーマの析出
8.政党スキーマを独立変数とした分析
 ○RQ1: 自民党に対する「国家建設者」スキーマの弱化は投票行動に影響を与えたのか
 ○RQ 2: 民主党は政権交代可能な政党としてのスキーマを確立できたのか
 ○RQ 3: 小泉内閣スキーマの変遷によって,政党スキーマの変遷では説明できない変化を説明できるのか
9.政治アクターの世界認識と投票行動
4章.マスメディアと小泉の選挙:メディアはコトバを与えたか,関心を高めたか (稲増一憲・池田謙一)
1.報道は有権者に何を与えるか
2.2005年選挙報道の内容分析手続
3.刺客報道の顕著さ
4.メディアの戦略的中立性
5.刺客報道接触が投票行動に与える効果
6.メディアはコトバを与えたのか
7.刺客報道による「熟考」と「参加」
8.報道は全体として何をもたらしたのか
第2部:リアリティのベースライン
プレリュード
5章.ソーシャル・ネットワークと投票,政治参加(池田謙一)
1.対人的情報環境研究の文脈
 ○集団の変化要因と安定要因
 ○集団と社会関係資本
2.IPE
 ○IPEという環境
 ○IPEの測定
3.分析の方略と仮説
 ○IPE効果仮説
 ○社会的同質性効果仮説
 ○能動性仮説
 ○仮説のまとめ
4.用いるデータと変数
 ○従属変数
 ○独立変数
5.IPE効果仮説の検討
6.情報リッチなIPE効果仮説の検討
7.社会的同質性効果仮説の検討
8.能動性仮説の検討
 ○従属変数を政治参加とした分析
 ○ネット他者による小泉効果
9.対人的情報環境は同調を強制するのではない
6章.ネットワーク多様性と政治参加・政治的寛容性(池田謙一・小林哲郎)
1.参加と寛容性:二頭立ての民主主義
2.マッツのポイント
3.政治参加の測定について
4.政治参加の規定要因について
5.寛容性の測定について
6.寛容さの規定要因
7.JESⅢによる分析
 ○独立変数:「社会的な接触の多様性」
 ○独立変数:「対立する政治的意見との接触」
 ○統制要因
 ○インフォーマルなネットワークの多様性の効果
 ○フォーマルなネットワークの多様性の効果
8.ネットワーク多様性と政治参加・政治的寛容性
7章.私生活志向のゆくえ:狭められる政治のアリーナ(池田謙一)
1.私生活志向
 ○脱物質主義
 ○業績主義と自己実現
 ○私生活志向ないし私生活中心主義
 ○社会階層のポストモダン
2.21世紀初頭の私生活志向とその尺度化
3.政治についての情報処理水準低下に関する仮説
4.私生活思考と脱物質主義的価値観,および認知の相互制約性
 ○脱物質主義的価値観との関連性
 ○仮説1の検討
 ○仮説2の検討
5.私生活志向の来し方・行く末
 ○私生活志向の行く末をめぐるRQ(リサーチ・クェスチョン)
 ○私生活志向の来し方を探るRQ
6.誰も困らないからこそ私生活志向は深刻でありうる
8章 インターネット利用の社会化とその政治的含意(小林哲郎)
1.小泉政権期におけるインターネット利用の推移
2.民主主義政治システムにおけるインターネット利用の位置づけ
3.インターネット利用における党派性のバイアス
4.インターネット利用が政治にもたらす間接的な効果
5.データおよび小泉政権期におけるインターネット利用の変化
6.インターネット上の政治情報利用者の特徴の変遷
7.インターネット利用が政党支持および小泉内閣に対する評価に及ぼす効果
8.インターネット利用が社会関係資本に及ぼす効果
9.小泉政権期におけるインターネット利用の変化とその政治的含意
9章 マスメディアのパワーはいずこに:微力な効果としての強力効果論(相田真彦・池田謙一)
1.政策争点に対する議題設定効果
 ○議題設定効果研究の弱点
 ○累積接触モデル仮説
 ○内容分析
 ○個人の接触量の作成
 ○結果
 ○まとめ
2.政策争点以外の議題設定研究
 ○投票意図へのメディアの効果
3.争点報道効果の分化
4.マスメディアの態度への効果
 ○根強い強力効果論への眼差し
 ○メディアを取り巻く環境と「不偏不党性」
 ○メディアと情報環境
5.争点報道との態度変容
6.テレビは人を投票所へ運ぶか? 7.ささやかな「強力効果」
あとがき

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