『自治体発の政策革新:景観条例から景観法へ』
A5判300頁定価:本体3000円+税 ISBN4-8332-2376-7 C3031
2006年4月20日刊行
著者紹介
伊藤 修一郎(いとう しゅういちろう)
1960年 神奈川県生まれ
1996年 MPA(ハーバード大学)修了
2000年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科政治学博士
現在 筑波大学大学院人文社会科学研究科教授
著書『自治体政策過程の動態』慶應義塾大学出版会,2002年
論文「自治体政策過程における相互参照経路を探る:景観条例のクラスター分析」年報公共政策3号2003年
内容紹介
本書は景観条例を題材として,自治体が現代社会の政策課題に取り組む主体として,その潜在力を発揮できるのは,どのような条件のもとでか。いかにして自治体発の政策革新が可能になるのか,を追究する。分析した自治体は全国に及び,理論整理と事例研究の実証的積み重ねは,他に類をみない。
目次 | |
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はじめに | |
本書の目的:自治体発の政策革新の解明 今日的政策としての景観条例 景観問題に典型的に表れる政策課題の構造 コモンズとしての景観 コモンズの悲劇の解決策 コモンズのルールとしての景観条例 本書の構成 |
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第一章 政策革新の理論:総体レベルの政策革新 | |
定義と先行研究 政策革新とは 個体レベルのアプローチ 政策波及と総体レベルの研究 動的相互依存モデル再訪 相互参照 横並び競争・垂直的政府間関係 総体レベルでの相互作用と動的相互依存モデル モデルの拡張:相互参照による総体レベルでの政策革新 政策移転と四つの行為類型 四つの行為類型と政策の展開 双方向のフィードバック 政府間関係の動態的把握 本章のまとめ |
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第二章 景観条例の歴史的展開:総体レベルでの法学的観察 | |
景観条例の変遷の分析手法 先行研究:目的による分類 政策手段の特定作業 景観条例の展開:制定状況概観 歴史的景観条例 古都保存法と金沢市条例の登場 京都市条例から伝建制度へ 柔軟な制度の模索と都市景観形成 神戸市条例の制定 神戸市モデルの形成 多様化と選択的受容 県条例 バブル期以降の展開 保全対象の拡大と開発規制 総合化・複合化・市民参加 他の政策手段 双方向のフィードバック 景観法の政策手段 本章のまとめ |
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第三章 革新者たち:金沢市,神戸市,藤沢市の政策過程追跡 | |
観察の対象と枠組み 調査対象 先行研究の検討 金沢市伝統環境保存条例 政策転換の要因 学識者による検討 伝環条例の制定 条例の執行 神戸市都市景観条例 都市計画局による条例の検討 条例制定へ 神戸市条例の特徴と執行 藤沢市 都市デザイン懇話会の発足 条例化の意思決定 条例の特徴と執行 先行者へのフィードバック 金沢市 神戸市 本章のまとめ |
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第四章 伝建の指定と執行:竹富町と川越市の政策過程追跡 | |
竹富町 島の生活と景観 条例の制定過程 条例の執行状況 川越市 蔵造り保存運動 蔵の会と町づくり規範 景観条例の制定 マンション紛争と伝建地区指定 甘楽町 桐生市 本章のまとめ |
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第五章 バブル経済下の条例の波及:群馬県内の比較事例研究 | |
群馬県内の景観条例普及状況 新治村:バブルへの迅速な対応 水上町谷川区:自発的住民協定 嬬恋村・長野原町:高さ規制を前面に 川場村: むらづくりから条例へ 高崎市・前橋市:紛争なき条例制定 草津町:都市類似的課題への対応 片品村:花を愛する村長の遺志を実現 月夜野町:条例を検討するも制定せず 群馬県の役割 本章のまとめ |
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第六章 条例制定過程の全体像:景観アンケートによる一般化 | |
条例制定過程を理解する枠組み:修正ステージ・モデル 景観条例制定過程の実際 自治体の属性と条例制定の有無 政策過程の型 外的刺激 内部検討過程のパターン 不確実性の高さと相互参照 条例制定過程のまとめ 条例を制定しない理由 検討中の自治体 未検討自治体の「政策過程」 本章のまとめ |
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第七章 相互参照の実態:どこがどこを参照するのか | |
検証すべき論点 先行研究の検討から 準拠関係の有無 参照の対象 事例研究から見る相互参照 相互参照の実際 日常の相互参照 政策策定時の相互参照 相互参照の対象 回答状況:活発な相互参照 上位参照先はどこか 準拠関係の有無:相互参照の対象は安定しているか 相互参照の規則性 文字どおりの相互参照はあるか 近隣の自治体を参照するか 類似・同格の自治体を参照するか 本章のまとめ |
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第八章 政府間関係と政策革新:国・都道府県・市町村間の相互参照 | |
相互参照と政府間関係 国の自治体への影響 都道府県の影響力(条例以外) 都道府県の役割意識 市町村条例に対する姿勢 都道府県の指導・補助事業 都道府県条例が市町村条例に及ぼす影響 県条例制定の影響 条例内容の影響 都道府県の相互参照:都道府県は市区町村を参考にするか 国との関係 国から自治体への参照はあるか 横並び競争は起こるか 本章のまとめ |
第九章 相互参照と政策の発展:政策手段の多様化と共通化 |
相互参照と内容の類似の視覚的把握:クラスター分析 相互参照による多様性の保持:条例間距離の測定 都道府県条例による市町村条例の内容の収束 景観条例の三つの型:主成分分析 景観条例の構造と指標 成分得点の算出 条例の特徴を生み出す要因 本章のまとめ |
第十章 景観条例の執行と自治体の選択:コモンズの悲劇を乗り越える |
景観条例の執行と効果 執行状況 指導拒絶の有無 景観条例が効果を発揮する条件(ゲーム分析1) 指導拒絶はどの条例で生ずるのか 執行体制 自発的解決を促す行政指導が成り立つ条件 事例による検証 アンケート調査データによる検証 なぜ誘導が好まれるのか(ゲーム分析2) 事例研究・統計データによる検証 本章のまとめ |
終章 政策革新を促す |
本書の発見の概要 相互参照をめぐる発見の含意 地方制度改革への含意 相互参照をどう促進するか 多様なメディアの活用とオープンソースな政策開発 ネットワークの重層化 普及促進機関の役割 景観法の活用と現代的共通課題への取り組み おわりに |
補論 |
条例制定自治体の特定 景観(市区町村)アンケート 都道府県(景観)アンケート モデル自治体調査 引用文献 索 引 |