『イギリス立憲政治の源流:前期ステュアート時代の統治と「古来の国制」論』
A5判480頁定価:本体7000円+税 ISBN4-8332-2371-6 C3022
2006年1月20日刊行
著者紹介
土井 美徳(どい よしのり)
1964年兵庫県生れ
早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了
政治学博士
現在,奥羽大学文学部専任講師
専攻:西洋政治史,政治思想史
著書『クムロウェルとイギリス革命』(共著)聖学院大学出版会,1999年
論文「初期スチュアート期のコモン・ローと選挙権」『西洋史学』第180号,1996年
内容紹介
従来市民革命研究に偏っていた英国近代について,慣習と理性に基づく「古来の国制」論を換骨奪胎し,ローマ法をも受け入れ,新たな構想の下に確立して英国立憲政治の源流をなした17世紀前期ステュアート時代の庶民院で活躍したコモンローヤーたちの言説を分析して,その思考形式とレトリックを抽出する。それは内乱期の逸脱,大空位期,王政復古,名誉革命を経て大陸ヨーロッパと異なる英国型漸進主義・改革主義的思考伝統の形成に寄与した。
目次 | |
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序論 | |
一 問題の所在 二 研究史の整理 三 方法論の確認 四 本書全体の構成 |
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第一章 イングランドの伝統的国制論 | |
第一節 ヘンリー・ブラクトン 1「イングランドの法と慣習」 2 制限君主制の理念:法に従う「良き統治」 3 王権の至上性と元首立法権 第二節 ジョン・フォーテスキュー 1 フォーテスキューの歴史的位置 2 自然法と神法 3 人定法と「徳」の実現 4 イングランドの古来の慣習法 5 政治的統治と王権的統治 6 ボディ・ポリティークの理念 第三節 トマス・スミス 1 制限君主制の理念と人文主義の影響 2 法とコモンウェルス 3 イングランドの議会の権能と統治の両義性 第四節 前期ステュアート期への継承 |
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第二章 ルネサンス人文主義の知的影響 | |
第一節 中世ローマ法学とルネサンス人文主義 1 注釈学派 2 注解学派:バルトールス派 3 人文主義法学とネオ・バルトールス派 第二節 イングランドのローマ法継受とローマ法学者 1 ローマ法の部分的継受 2 イングランドのローマ法学者 3 ローマ法と絶対的主権論 第三節 カムデン・ソサイエティとルネサンス人文主義 1 ウィリアム・カムデンと人文主義の歴史研究 2 コモン・ローヤーの人文主義的な法学研究 第四節 イングランド法の改革と法の一般原理 1 イングランドの法改革 2 コモン・ローの一般的原理:格率あるいは準則 第五節 コモン・ローヤーによるローマ法の受容 1 法曹学院とローマ法研究 2 コモン・ローヤーとローマ法 第六節 17世紀の「古来の国制」論の形成へ 1 コモン・ローの「古来性」とローマ法的「理性」 2 コモン・ローの「古来性」と人文主義的歴史研究 |
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第三章 「古来の国制」論とコモン・ロー理論 | |
第一節 慣習としてのコモン・ロー 1 超記憶的慣習と一般的慣習 2「時の検証」と「時の作品」 3 時の叡智と自然的エクイティ 4 コモン・ローの不変性と歴史的改変 5「時の検証」と合理性の獲得 第二節 理性としてのコモン・ロー 1 自然法・神法との一致 2 技巧的理性と自然的理性 3 共通善と必要の概念 4 自然と慣習と人為の観念 5「コモン」の意味内容 :言語分析の観点から |
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第四章 コモン・ロー支配の立憲君主制 | |
第一節 コモン・ローと議会制定法 1 議会人と法律家 2 コモン・ローの改変と議会制定法 3 法の解釈者 第二節 コモン・ローと国王権力:ジェームズの政治思想 1 スコットランド国王ジェームズ六世の主著 2 イングランド国王ジェームズ一世の政治言説 3 ジェームズ一世の1610年議会の演説 4 絶対的国王大権と「必要」の観念 第三節 コモン・ローと「主権」の概念 1 コモン・ローヤーの国王大権解釈 2 国王の「通常権力」と「絶対的大権」 3「主権的権力」と「コモン・ローの摂理」 第四節 臣民の自由と議会の特権 1「絶対的プロパティ」とコモン・ロー 2「絶対的プロパティ」と「議会の同意」 3 議会の古来の特権:「討論の自由」 第五節 議会選挙と選挙権の自由 1 選挙権の自由とコモン・ロー 2「コモン・ライト」としての選挙権 3 ラディカリズムとコンサーバティズムの現れ |
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第五章 コモン・ローとローマ法とジェームズ一世 ― ジョン・カウエル事件と1610年議会― | |
第一節 カウエル事件の意義と問題の所在 第二節 ジョン・カウエルと『解釈者』:ローマ法の言説 1 カウエルの経歴と『イングランド法提要』 2『解釈者』と絶対主義の国制論 第三節 1610年議会でのカウエル事件の審議 1 庶民院による弾劾 2 両院合同委員会の審議 第四節 ジェームズ一世の政治的態度 1 カウエル事件とジェームズの統治理念 2 カウエル事件に関する国王の「布告」 第五節 コモン・ローとローマ法の関係 1 エリザベス期のローマ法継受 2 ステュアート期における変容 |
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むすび :「古来の国制」論とイギリス政治の伝統 | |
【付録】主要なコモン・ローヤーの略歴 | |
文献目録 | |
事項索引 | |
人名索引 |