『日本政治研究』第1巻1号
日本政治研究における数量分析+歴史研究の新コミュニティフォーラム
日本政治研究学会編集 菊判・200頁・定価:本体3000円+税
ISBN4-8332-2350-3 C1031 2004年1月15日発行
世話人 五百旗頭 真(神戸大学大学院法学研究科)
世話人 猪口 孝(中央大学法学部)
世話人 蒲島 郁夫(東京大学大学院法学政治学研究科)
世話人 北岡 伸一(国際連合日本政府代表部大使)
世話人 小林 良彰(慶応義塾大学法学部)
世話人 苅部 直(東京大学大学院法学政治学研究科)
世話人 谷口 将紀(東京大学大学院法学政治学研究科)編集主幹
『日本政治研究』発刊趣旨
日本政治研究が日本政治学界で最も重要な専門分野になったのはこの25年のことである。それまでの25年は日本近代史と欧米思想が最重要領域であった。第2次世界大戦後の自由民主主義社会の中で,日本の政治学が追究した問いは(1)なぜこのような戦争敗北に繋がるような政治体制が存在したのか、(2)これからの新生日本はどのような政治理念・制度に基づいた政治体制を築いていくべきかであった。これらの鍵となる問題意識の下では,上記の問いかけは当然であり,それらの対応した政治学専門分野が多くの政治学徒を引きつけたのも自然であった。
20世紀第4・四半世紀になると,政治学の主導的な問いかけは日本政治体制のさまざまな長短やそれを支える理論や制度を問題とするものであった。アプローチも記述的なものから分析的なものへ,規範的なものから実証的なものが着実に増加していった。ながく政権党の座にあった自民党の一時的権力喪失や官庁機構の社会掌握の低下、そしてより一般的には国境で閉ざされた単位を一国だけで運営する政治や経済の仕組みがすこしずつほころびを現出してきた。その直中にいる日本政治を研究する潮流も次第に変化をみせてきている。
眼前にある政治行動,政治制度,政治構造を実証的に分析することに加えて,より長いスパンの歴史的な展開を踏まえた政治構造の理解やより根強い文化的な特性の歴史的な起源の探索にも大きな関心が向きはじめたのである。いいかえれば,日本現代政治の行動論や制度論から日本政治の歴史的構造論へと向かうひとつの流れができたのである。本誌はその流れをより明確化し,より深化させることを意図している。
本誌はそのような流れを促すと同時に,学問分野が現代日本政治過程論と日本近代史学に小さく分かれて交流が途絶えがちだったことを反省して,それらの新しい融合を目指すものである。ひとくちでいえば,日本政治研究に歴史をいれよう,文化をいれようということである。どちらも日本だけでなく,外国をも視野にいれて考察,精査することを目指すものである。世話人7名はその運動の前衛となるべく,賛同者の投稿を歓迎する。
目次 | |
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発刊趣旨 | |
<論文> | |
政党システムと政治的疎外:日米比較 | 蒲島 郁夫 シェリー L. マーティン |
関税自主権の回復をめぐる外交と財政 ―明治初年の寺島宗則と大隈重信― | 五百旗頭 薫 |
日本政治における農村バイアス | 菅原 琢 |
日本における政治家のマスメディア観 | 逢坂 巌 |
東・東南アジアにおける価値観の変化と民主的ガバナンスの挑戦 | 猪口 孝 安 清市 |
<特集> | |
座談会『日本政治研究』が目指すもの | 猪口 孝 蒲島 郁夫 北岡 伸一 小林 良彰 苅部 直 谷口 将紀 |
五百旗頭真氏に聞く | 五百旗頭 真 |
<書評/書評論文> | |
わが国における選挙研究の系譜と課題・Ⅱ-1999年~2003年 | 川人 貞史 |
<書評> | |
わが国における選挙研究の系譜と課題・Ⅱ-1999年~2003年 | 小林 良彰 |
パク・チョルヒー『代議士のつくられ方』 | 米谷 寛子 |
森裕城『日本社会党の研究』 | 農端 康輔 |
樋渡展洋・三浦まり(編)『流動期の日本政治』 | 今井 亮佑 |
海野道郎編『日本の階層システム2 公平感と政治意識』 盛山和夫(代表)『現代日本の社会階層に関する全国調査研究第7巻 政治意識の現在 | 梅田 道生 |
Richard J. Samuels, Machiavelli's Children | 猪口 孝 |
お知らせ 投稿要領 | |
編集後記 |