木鐸社

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『公共政策の基礎 ―倫理学・経済学・政治学』

原題:Ethics, Economics & Politics, 2002
A5判230頁 定価:本体2800円+税 ISBN4-8332-2358-9 C3012
2004年10月28日刊行

著者紹介

<著者>
I. M. D. Little
1918年英国生れ,オックスフォード大学卒業後,同大学オール・ソウルズ・カレッジ(1948-50),トリニティ・カレッジ(1950-2),ナフィールド・カレッジ(1952-1976)の各フェローを勤めた。
1973年ブリティッシュ・アカデミー会員
OECD(経済協力開発機構)事務次長(1965-67),世界銀行特別アドバイザー(1976-78)
主要著書
A Critique of Welfare Economics, 1950;Project Appraisal and Planning for Developing Countries, 1974(J. A. Mirrleesとの共著)
<翻訳>
松本 保美
早稲田大学政経学部教授

内容紹介

 本書は多くの研究者による多様な価値判断基準や評価基準が広くかつコンパクトに紹介され,読者には,様々な経済的・政治的価値判断基準を手っ取り早く把握できると同時に,このような基準および,それに基づく判断が持つ問題点・困難さも理解できる構成になっている。その際,理論は常に現実世界の実態に照らして論じられる。著者は,経済学,政治学,哲学は互いに密接な関わりを持ち,とりわけ,経済学および政治学に対する哲学の影響力は重要であり,社会科学においては絶対的あるいは普遍的な価値基準は存在せず,道徳・正義・社会通念などの価値判断基準は全てその時々の社会状態に依存すると考える。実際の政治経済学的問題に関わりを持つ人々に,有益な示唆を与える。

日本語版への序文(I.M.D. リトル)

 本書が日本語に翻訳されたのを聞いて,私は非常にうれしく思っている。学生や公共政策に携わる人々は,倫理学,経済学および政治学における問題が,この三分野全てに係わり合いを持ち,依存し合っていることを理解する必要がある。この理解をさらに深めることが,この小著の目的である。とりわけ,倫理学がこの学際的な研究の中心である。本書には普遍的な道徳は何も示されていない。道徳律は政治社会と共に進化し,こうした道徳律の要素は,理路整然とした公共政策なら,どのような政策の中にも,暗黙の内に含まれている。 2004年6月26日

目次
日本語版への序文
緒言と謝辞
第Ⅰ部 経済学と哲学
1 個人効用と厚生
 期待効用とリスク
 リスクと変動
 リスクと平等
 効用と実証的経済学
 効用と規範的経済学
2 集団的効用と厚生
3 厚生経済学
 理論的厚生経済学
 応用厚生経済学と費用便益分析
第Ⅱ部 政治学と哲学
4 国の役割
 国家権力の限界
 個人の権利
 社会契約と所有
 所有と所有権
5 功利主義:理論と応用
 効用と命の価値
 国と人口政策
 今日の共同社会とは何か(国民と外国人に関して)
 国と将来のための貯蓄
6 功利主義,正義,平等
 功利主義と平等
 ロールズの正義の理論
 正義の意味
 分配的正義
 国際間の分配的正義
 ドゥオーキンと資源の平等化
 平等の測定
 要約
7 契約主義
8 共同社会主義
第Ⅲ部 経済学と政治学

9 ゲーム,合意,公共財
 ゲーム
 社会通念
 公共財
 公共財と国
10 実証的政治経済学
 内生化する政府
 民主的政府と強権的政府
 集団的選択と投票
 絶対専制主義的な政府の下での経済政策
 民主制の下での経済政策
 政策とその傾向に関する政治経済的説明のモデル化
 工業諸国における保護政策の政治経済学
 工業諸国における政府の拡大
 発展途上国における保護政策と輸入代替
 発展途上国における政治改革
 内生化する政府に関する内容の乏しい中間報告
11 規範的政治経済学
 政府と分配に関する一層の考察
 レント・シーキングと贈収賄
第Ⅳ部 倫理学,経済学,および,政治学
12 公共政策の原理
 第Ⅰ部,第Ⅱ部,第Ⅲ部のまとめ
 哲学的枠組
 政府支出の規模
 公共政策の境界
参考文献
訳者解説
索引

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