『ユーロとイギリス』
A5判369頁6000円+税 ISBN4-8332-2336-8 C3022 2003年5月上旬刊行
著者紹介
力久 昌幸
1963年福岡県生れ
1987年京都大学法学部卒業
1993年シェフィールド大学M.Phil.
1994年京大大学院博士後期課程研究指導認定退学
1996年法学博士
現在 同志社大学法学部教授
内容紹介
■欧州通貨統合をめぐる二大政党の政治戦略
「イギリスはユーロに参加するか」に答えるため,本書はダイナミック歴史的制度論アプローチをとる。政党指導部の戦略とイデオロギーを横軸に国民国家‐EU‐地域という多層ガバァナンスにおける権限移譲拡散の流れを縦軸に,両軸が交差する点に焦点を当て検証し,展望を加える。
関連書
力久 昌幸著
『イギリスの選択』木鐸社,1996年
A5判・442頁・6000円(1996年)ISBN4-8332-2233-7
■欧州統合と政党政治
欧州統合は戦後のヨーロッパにとって最も重要性を持つ問題であった。イギリスにとってもEC加盟は国家の命運を決する大事であり,国内の論議は長い間コンセンサスを欠いた。本書は,その原因について,政党システムのメカニズムとイデオロギーを中心に分析する。特に政党指導部の役割に注目しつつ考察した政治分析。
目次 | |
---|---|
序章 本書の課題と分析枠組 | |
(1)イギリスのユーロ参加問題 (2)歴史的制度論アプローチ (3)EU加盟国の政治制度のあり方と欧州統合への態度 (4)政治戦略と政治制度 (5)多層ガヴァナンス (6)本書の構成 |
|
第1章 欧州通貨統合の実現へ向けた歩み | |
(1)為替相場の安定を求める動き (2)単一通貨導入へ向けた努力 (3)ユーロ誕生 |
|
第2章 欧州通貨統合と保守党政権 | |
(1)ヨーロッパの党 (2)サッチャー政権 (3)メージャー政権とマーストリヒト会議 (4)ERM脱落とマーストリヒト条約批准プロセス (5)欧州通貨統合脱争点化の画策 (6)1995年保守党党首選挙 (7)通貨統合をめぐる党内対立の激化 (8)1997年選挙惨敗 |
|
第3章 欧州通貨統合と野党労働党 | |
(1)欧州統合に対する消極的立場 (2)ERM参加反対論 (3)ERM参加賛成論への転換 (4)欧州通貨統合に関する積極的立場 (5)欧州統合へのコミットメントとマーストリヒト条約批准プロセス (6)政権奪回への道 (7)労働党欧州統合懐疑派 (8)1997年選挙における地滑り的勝利 (9)“Wait and See” |
|
第4章 集権主義戦略-保守党政権による憲政改革への抵抗- | |
(1)イギリスの集権的制度編成 (2)小さな政府と集権主義戦略 (3)スコットランドとウェールズに対する権限移譲の拒絶 (4)サッチャリズムの洗礼 (5)欧州通貨統合と集権主義戦略 |
|
第5章 分権主義戦略-ニュー・レイバーと憲政改革- | |
(1)集権的制度編成へのコミットメント (2)スコットランドとウェールズに対する権限移譲問題の浮上 (3)政策見直しと権限移譲への積極的立場 (4)ニュー・レイバー解釈 (5)新しい社会民主主義 (6)分権主義戦略の背景 (7)欧州通貨統合と分権主義戦略 |
|
第6章 ユーロ参加と労働党政権 | |
(1)政権交代による関係改善とアムステルダム条約 (2)ユーロ参加の先送り (3)5つの経済的基準 (4)国内政治状況 (5)議長国就任とユーロ導入をめぐる影響力の周縁化 (6)1999年欧州議会選挙 (7)ユーロ導入に向けた全国移行計画 (8)「ヨーロッパの中のイギリス」 (9)ユーロ参加をめぐる戦術的対立 (10)2001年選挙と労働党政権の再選 |
|
第7章 ユーロ参加と野党保守党 | |
(1)1997年総選挙惨敗のショック (2)1997年保守党党首選挙 (3)2議会期にわたるユーロ参加の否定 (4)親ユーロ保守党とUK独立党 (5)1999年欧州議会選挙 (6)『常識革命』 (7)「ポンドを維持しよう」キャンペーン (8)2001年選挙における再度の惨敗 |
|
第8章 分権主義戦略の実施-権限移譲と労働党政権- | |
(1)スコットランドとウェールズに対する権限移譲の準備 (2)スコットランドとウェールズにおける住民投票 (3)権限移譲法案 (4)スコットランド議会選挙とウェールズ議会選挙 (5)北アイルランド紛争と労働党 (6)ベルファスト合意 (7)北アイルランド住民投票と議会選挙 (8)イングランド諸地域に対する権限移譲 (9)大ロンドン市の復活とロンドン市長の誕生 (10)ユーロ参加と分権主義戦略 |
|
第9章 集権主義戦略の動揺-権限移譲と野党保守党- | |
(1)権限移譲反対キャンペーン (2)スコットランドとウェールズにおける住民投票敗北 (3)スコットランド議会選挙とウェールズ議会選挙 (4)北アイルランド紛争と保守党 (5)北アイルランド和平プロセス (6)イングランド諸地域に対する権限移譲への反対 (7)ロンドンをめぐる政策転換 (8)ユーロ参加と集権主義戦略 |
|
終章 ブレアの選択 | |
(1)本書の議論の要約 (2)イギリスはユーロに参加するか? (3)欧州連邦の中のイギリス連邦 |
|
あとがき | |
索引 |