『将軍ワシントン―アメリカにおけるシヴィリアン・コントロールの伝統応』
原題:George Washington and the American Military Tradition
ISBN4-8332-2345-7 C1023 A5判・200頁・本体価格2500円+税 2003年10月30日刊行
著者紹介
<著者>
ドン・ヒギンボウサム(Don Higginbotham)
1931年生れ
現在ノースカロライナ大学チャペルヒル校歴史学部教授
<翻訳>
和田 光弘(わだ みつひろ)
1961年生まれ。現在名古屋大学大学院文学研究科助教授
森脇 由美子(もりわき ゆみこ)
1963年生まれ。現在三重大学人文学部助教授
森 丈夫(もり たけお)
1969年生まれ。現在福岡大学人文学部専任講師
望月 秀人(もちづき ひでと)
1973年生まれ。現在名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程
内容紹介
■アメリカにおけるシヴィリアン・コントロールの伝統
米国初代大統領として馴染み深いジョージ・ワシントンが大陸会議によって正規軍総司令官に任命され,イギリス軍と正面から対峙しつつ,大陸各地を転戦し,独立を確実なものとする過程でシヴィリアン・コントロールの伝統が如何に生まれ,継承されてきたかを彼の評伝によって簡潔に描く。著者は独立革命期の軍事史,ワシントン研究の専門家・権威
目次 | |
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日本語版への序 序 はしがき 第1章 植民地時代の伝統 第2章 過渡期の伝統 第3章 独立革命期の伝統 第4章 ジョージ・ワシントンとジョージ・マーシャル 訳者後書き 用語解説 |
日本語版への序
ジョージ・ワシントンとアメリカの民軍関係を論じた拙著を,このたび日本の読者の皆様にお読みいただく機会を得て,大変光栄に存じます。この民軍関係という点に関して,日米両国は非常に異なる伝統を育んできました。わが国ではジョージ・ワシントンらアメリカ独立革命の指導者たちが,母国イギリスの経験や思想を取り入れるとともに,独立戦争自体からも多くのことを学びました。1787年に制定された合衆国憲法は,しばしば政治的かつ軍事的な文書といわれますが,そこには文民統制の原則が明記されております。独立戦争中,ワシントンが常に大陸会議を上位の権威として尊重したがゆえに,かかる原則を憲法に明示することが容易となったのです。大陸会議は彼を総司令官に任命し,彼もまた大陸会議に対して忠誠を尽くしました。さらに彼は,自らの軍隊の宿営や戦闘の場となった各邦(ステイト)においても,その文民の権威に対して敬意をもって接したのです。
このような民軍関係の伝統に歴代の将軍たちが忠実であり続けたからこそ,われわれアメリカ人は,軍事を社会から切り離して捉えようとはしなかったのです。元将軍たちを大統領に選ぶことをためらわないのも,同じ理由によるものです。じじつ,2004年の大統領選にもまた一人,華々しい軍歴を持つ将軍ウェズリー・クラークが名乗りをあげており,その証左ということができましょう。
2003年10月 ノースカロライナ州チャペルヒルにて