『第Ⅰ巻 現代日本の市民社会・利益団体』
現代世界の市民社会・利益団体研究叢書
A5判・368頁・定価:本体4000円+税 発行:2002年4月20日 ISBN4-8332-2319-8 C3330
著者紹介
<総編集>
辻中 豊
目次 | |
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第Ⅰ部 導入 1章 序論:本書のモデル・構成・見方 2章 方法:日本における利益団体研究とJIGS調査の意義 3章 概観:市民社会の政治化と影響力比較 第Ⅱ部 日本の政治過程と市民社会組織・利益団体 4章 団体プロフィール 5章 地域空間論 6章 団体-行政関係 7章 団体-政党関係 8章 ロビイング 9章 地球化と世界指向団体の登場 第Ⅲ部 比較の中の日本:社会過程・政治体制と市民社会組織 10章 比較の分析枠組み 11章 制度化・組織化・活動体 12章 歴史的形成 13章 団体のリソース 第Ⅳ部 全体的な分析と結論 14章 現代日本市民社会の団体配置構造 15章 結論 |
はじめに(文責:辻中 豊)
(実際の「はじめに」とは内容が異なります)
本書は,一連の比較市民社会組織・比較利益団体分析の出発点をなす書物である。
この一連の調査は,1997年春に日本から始まり,同年秋から冬には韓国調査,98年から99年にかけて米国調査,2000年にはドイツ調査が実施された。そして2001年以降中国調査が実施されつつある(注:以上の共同研究チームと調査方法,データについてはコードブック参照。辻中編1999a。1999b。2001a。2001b)。
私たちは,この5カ国調査が世界的にも希な,市民社会の組織やその政治活動に関する体系比較であり,世界の比較市民社会研究に基礎データを提供するものと考えている。市民社会やNPO,NGOといった概念は,冷戦以後,社会主義以後の世界を亡霊のようにさ迷っているが,その実質に迫る経験研究は少ない(例外的な比較研究としてサラモン・アンハイアー1997ほか参照)。
本書は,こうした一連の調査結果すべてを分析するものではなく,その嚆矢として,各国データの一部を日本の位置を明らかにするために援用しながら,専ら日本の政治過程。市民社会構造に焦点をあてて分析するものである。現段階での可能なデータ分析を意味するが,より積極的には,これに続く,韓国,米国,ドイツ,中国の各国研究,の対比較研究に対して,理論や分析方法・手法において先鞭をつけ,導き手としたいからである。各国研究および日本との比較を行った後,最後の巻において,全体の比較分析をより体系的に行い,全体として総合するというのが本研究チーム(出発点での名称は「団体の基礎構造に関する調査」チーム,Japan Interest Group Study略称 JIGSである。現在の 比較研究全体の正式英文名はCross-national Survey on Civil Society Organizations and Interest Groupsであるが,全体を今もJIGSと呼称する)の戦略である。
簡単に,研究の経緯を記しておこう。政治過程や市民社会における圧力団体,利益集団,NGO/NPOなど市民運動に関する研究は,常にしっかりした対象,素材,データは何かという問題に悩んできた。編者は,1970年代からこの問題に取り組んできたが,90年代の中頃,地球環境政策ネットワーク研究(Global Environmental Policy Network Study, GEPON,これも日韓米独4カ国で,1997-2000年に遂行した。)に取り組むこととなり,そこで再び政策ネットワークの基底である社会過程でのNGO,NPOなどの意義をしっかりと捉えたいと考えはじめた。今度こそ,これまでとは異なる,徹底的に包括的な,市民社会組織の把握を,市民社会の組織的な輪切りをしたような把握を,行いたいと考えた。幸い,この書に寄稿してくれている若い優秀な研究者が,筑波大学に集っていたのを幸いに,JIGS-日本調査を97年に行った。この時,この研究が数カ国に亘る調査研究として成功するという大望は,まだ「夢」の状態であった。というのは,下に記すような調査資金は全く目途が立っておらず,日本調査は,いわば,数十万円プラス人力で始めたからである。その後,このJIGS日本調査は,予想以上の成果を上げた。その結果,地球環境政策ネットワークGEPONとともに,多くの調査資金が得られ,現在では中国なども含め数カ国に亘る調査が可能となった。
本研究は,共同調査,共同研究の産物である。本書に寄稿している森裕城,崔宰栄,石生義人,平井由貴子,足立研幾のほか,多くの研究者・大学院生(三輪博樹,今井尚義,村井恭,金雄煕,鄭美愛,朴盛彬,高橋裕子),辻中ゼミ関係の学類学生の熱心な協力を得た。特に森裕城は,編者が多忙でともすればルーズになるのに対して,この数年一貫して研究の機動力かつ旗振り役,また押さえ役であったし,同様に崔宰栄は精密な統計分析を行い続けた。この両者なしには,本研究は出発し得なかったと思う。第一の貢献者である。加えて,この間,研究助手をつとめた仙保隆行,吉田里江,中里しのぶ諸氏にも感謝したい。
韓国,米国,ドイツ,中国と調査対象を広げていくには,言うまでもなく,内外の多くの研究者の助けなしには,行い得なかった。研究チームの詳細は,関連する各巻に譲るが,廉載鎬(高麗大学),李進(雄鎮専門大学学長),ミランダ・シュラーズ(メリーランド大学),フォリヤンティ・ヨスト(マーチン・ルター・ハレ大学),Li, Jing-Peng(北京大学)。坪郷實(早稲田大学)。久保文明(慶応義塾大学)。国分良成(慶応義塾大学)の名前は,ここで触れ,感謝の意を表せずにおれない。
本書が,草稿として。書き始められてからもほぼ2年が立つ(『選挙』での連載。辻中他1999)。編者が大掛かりな調査を各国で次々始めることに,若い研究者たちは呆れ顔で見つめていたが,その我慢も限界に達した今年,漸く纏めることが可能となった。
その第一草稿の纏まりを,通読し,厳しい批判をお願いするという我侭かつ無理な要求を,快く引き受けて頂いた何名かの研究者には,本当に感謝の気持ちで一杯である。その言わば被害者にあたる研究者は,伊藤光利(神戸大学),大西裕(大阪市立大学),丹羽功(富山大学),近藤康史(筑波大学)の諸氏である。2001年の春合宿に付き合って頂き心より感謝したい。
村松岐夫(京都大学),中野実(明治学院大学。故人),蒲島郁夫(東京大学),大嶽秀夫(京都大学),猪口孝(東京大学),福井治弘(広島市立大学平和研究所),佐々木毅(東京大学),川人貞史(東北大学),真渕勝(京都大学),加藤淳子(東京大学),河野勝(青山学院大学),田中愛治(早稲田大学),川島康子(国立環境研究所),佐藤英夫(筑波大学。故人),ピーター・カッツェンスタイン(コーネル大学),スーザン・ファー(ハーバード大学),フランク・シュワルツ(ハーバード大学),T.J.ペンペル(ワシントン大学),ロバート・ペッカネン(ハーバード大学)その他,多くの優れた先生方,先輩方に感謝の言葉を捧げたい。様々なご教示,ご批判,知的刺激無しには,こうした共同研究は生まれなかった。また,筑波大学の研究の諸先輩,特に進藤榮一,中村紀一,波多野澄雄諸先生,そして多くの仲間から得た刺激にも感謝したい。特に素晴らしい研究環境,時間,スペースと研究資金を提供してくださった大学当局にも心から感謝する。
最後に,私事ながら,編者の家族にも感謝したい。妻若子。長女梓,長男馨,次女遥に心から感謝する。頑固で,仕事中毒で,あまりできの良くない,夫,父親であるが,彼らなしには,いかなるしっかりした体系的な研究も生まれなかった。
なお,これまで得た助成金,補助金は,以下の通りである。審査委員,事務局など関係各位に心から感謝申し上げる。日本でも,世界的な実証調査が可能となったのは,こうした迅速な資金援助のお陰である。
補助金リスト
「団体の基礎構造に関する調査」(JIGS)および「地球環境政策ネットワーク調査」(GEPON)研究に関して得た研究助成基金の一覧
・文部省科学研究費補助金基盤研究(A)(1) (07302007) 「日米独韓における環境政策ネットワークの比較政治学的実証分析」(1995-1997)
・文部省国際学術研究(共同研究)(09044020)「日米独韓における環境政策ネットワークの比較政治学的実証分析」(1997-1999)
・筑波大学学内プロジェクト補助金S(1997-2000)「世界における地球環境政策ネットワークの比較政治学的実証分析」
・筑波大学学内プロジェクト補助金A(2000-2003)「世界における地球環境政策ネットワークの比較政治学的実証分析」 ・ 文部省科学研究費補助金基盤研究(A)(1) (12372001)「現代中国を中心とした利益団体および市民社会組織の比較実証的研究」(2000-2003)
・文部省科学研究費補助金基盤研究(A)(1) (10302002)「米欧アジア主要国家における地球環境政策ネットワークに関する比較政治学的実証分析」(2000-2001)
・サントリー文化財団助成金(1996-98年度)「現代日本およびフランスの政治構造・政治過程に関する研究」
・サントリー文化財団助成金(2000-2001年度)「異なる連立政権の形成とそのインパクト」
・松下国際財団助成金(1998-2000年度)「米欧アジア主要国家における地球環境政策に対する情報ネットワーク分析およびキーパーソンの認知に関する調査」
続卷
②韓国篇(2004年春刊行)ISBN4-8332-2320-1 C3330
③米国篇(2003年春刊行予定)ISBN4-8332-2321-X C3330
④ドイツ篇(2003年秋刊行予定)ISBN4-8332-2322-8 C3330
⑤中国篇(2003年秋秋刊行予定)ISBN4-78332-2323-6 C3330
⑥総括篇(2004年春刊行予定)ISBN4-8332-2324-4 C3330